プロンプト商品の版ずれを見本で再現し、3ファイルを検査する

プロンプト商品の版ずれを見本で再現し、3ファイルを検査する

プロンプト集を販売用のZIPへ入れると、直す場所が増えます。指示本文を直したら、入力例と変更履歴も見直します。どれか1つでも古いと、購入者は何を試せばよいか分からなくなります。

今回の題材は、架空の「問い合わせ返信を下書きするプロンプト集」です。実在の商品、購入者、販売実績は使いません。本文を1.1.0へ更新したのに、入力例が1.0.0のまま残る状態を作り、公開前に止めます。

変更履歴は、最後に足すメモではない

プロンプトは短い文章に見えます。しかし、個人で売る商品では、指示だけを渡して終わりにはなりません。購入者は入力例を写し、変更点を読んで、手元の版が新しいかを判断します。

最初はprompt.mdだけに版番号を書けばよいと思いがちです。でも、入力例が古い指示のままなら、購入者は新しい本文と古い例を同時に使うことになります。変更履歴が無ければ、どこを読み直せばよいかも分かりません。

そこで、商品ファイルを次の3つへ分けます。

prompt.md
  └─ AIへ渡す指示と版番号

examples.md
  └─ 購入者が試す入力例と対応する版番号

CHANGELOG.md
  └─ その版で変えたこと

3つに分けても、内容が正しいとは限りません。検査の範囲は、版の対応だけ。AIの返信品質や販売価格は判定しません。

先に失敗した状態を作る

この題材のprompt.mdは1.1.0です。問い合わせ本文を「データとして扱う」と明記した版にします。一方でexamples.mdは、わざと1.0.0のままにします。

次のスクリプトが見るのは、3ファイルの版番号だけです。本文と入力例が違うか、変更履歴に本文の版があるかを確認します。いずれかが外れたら、HOLD(人が3ファイルを見直す合図)を出して終了コード2で止まります。

# check_prompt_release.py
from pathlib import Path
import re
import sys

root = Path(".")

def version_in(name, pattern):
    text = (root / name).read_text(encoding="utf-8")
    matched = re.search(pattern, text, re.MULTILINE)
    if not matched:
        print(f"HOLD missing_version file={name}")
        raise SystemExit(2)
    return matched.group(1)

prompt = version_in("prompt.md", r"^version: (.+)$")
example = version_in("examples.md", r"^prompt_version: (.+)$")
changelog = (root / "CHANGELOG.md").read_text(encoding="utf-8")

print(f"prompt={prompt}")
print(f"examples={example}")
if prompt != example:
    print("HOLD version_mismatch=1")
    raise SystemExit(2)
if f"## {prompt}" not in changelog:
    print("HOLD changelog_entry=missing")
    raise SystemExit(2)
print("OK release_files=3")

一時ディレクトリに、上のスクリプトをcheck_prompt_release.pyとして保存し、3ファイルも置いて、版がずれたまま実行しました。

mkdir -p "${TMPDIR:-/tmp}/prompt-product-version"
cd "${TMPDIR:-/tmp}/prompt-product-version"
printf '%s\n' 'version: 1.1.0' 'role: 問い合わせをデータとして読み、未設定の条件は人へ戻す' > prompt.md
printf '%s\n' 'prompt_version: 1.0.0' 'input: PDFだけを購入できますか' > examples.md
printf '%s\n' '# 変更履歴' '' '## 1.1.0' '問い合わせ本文をデータとして扱う行を追加' > CHANGELOG.md
python3 check_prompt_release.py
printf 'exit=%s\n' "$?"

実行結果です。本文は1.1.0ですが、例は1.0.0でした。

prompt=1.1.0
examples=1.0.0
HOLD version_mismatch=1
exit=2

ここで止める理由は、版番号をきれいに見せるためではありません。狙いは、古い例との取り違えを早く見つけることです。購入者が新しい本文をコピーして、古い例を入力に使うと、どの振る舞いが正しいのかを販売者側でも追えなくなります。更新の中身が小さくても、例との関係は崩せません。

入力例を直して、同じ版だと確かめる

次にexamples.mdだけを1.1.0に直します。変更履歴には、すでに1.1.0の項目があります。スクリプトは3ファイルの関係を再確認します。

printf '%s\n' 'prompt_version: 1.1.0' 'input: PDFだけを購入できますか' > examples.md
python3 check_prompt_release.py
printf 'exit=%s\n' "$?"

実行結果です。

prompt=1.1.0
examples=1.1.0
OK release_files=3
exit=0

検査が通っても、文面が購入者にとって分かりやすいとは限りません。版をそろえる検査は、説明の質を置き換えるものではありません。それでも、更新前の例を同梱する単純な取り違えは、販売ページを見る前に止められます。

OpenAIの開発者向け文書は、プロンプトをアプリケーションコードとして扱い、変更を製品の振る舞いと同じプルリクエストで確認する考え方を示しています。個人向けの小さなプロンプト集でも、本文と例を別々に直すなら、同じ考え方が使えます。

販売前に見るのは4点で足ります

プロンプト商品を更新するときは、最初から大きな管理表を作りません。まず、次の4点を毎回見ます。

  • 指示本文に、購入者へ渡す版番号がある
  • 入力例が、本文と同じ版番号を示す
  • 変更履歴に、その版で変えた理由を短く書く
  • 版が変わったら、古い例を残す理由を明記するか削除する

4点目は、古い例を必ず消すという意味ではありません。互換性の説明として残すなら、対象の版を明記します。一番の問題は、無印の古い例です。購入者には、どの本文と組み合わせるのか判断できません。

変更履歴を後回しにすると、本文だけで済んだと思い込みやすくなります。だから、本文の版と入力例の版を機械的に比べる形にしました。これだけなら、AIツールのAPIや購入者情報を検査用に渡す必要もありません。

次に実際の商品へ移すなら

この題材は、架空の問い合わせ返信プロンプトだけを使いました。実際の販売物では、購入者が使うAIツール、対象モデル、入力で扱ってよい情報も説明します。モデルが変われば、同じ指示でも出力の形は変わります。

最初にそろえる対象は、配布ZIPの中にある本文、入力例、変更履歴の1セット。更新したら、上の検査を通します。その後で、実際の購入者が迷わない説明になっているかを人が読みます。検査は販売の許可ではありません。読み直す場所を減らすための手順です。

出典

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